十三年二月議会一般質問


■地域防災計画原子力災害対策編について

□策定の進め方について

東日本大震災が発生してから間もなく二年、全国からの様々な応援と官民挙げての努力によって復旧・復興が進められていますがその道のりはまだまだ遠いものがあります。一方、巨大災害を受けて災害対策の強化も大きな課題です。

 二月一日、宮城県防災会議が開かれ、宮城県防災計画の修正が決定されました。東日本大震災における福島第一原子力発電所事故を受けて、国は地域防災計画の中に独立した「原子力災害対策編」を新たに独立して設けることとし、宮城県でも昨年十一月二十日に第一回防災会議原子力防災部会を開催して修正案の審議を行いました。関係機関への意見照会を経て一月九日第二回原子力防災部会、一月十八日県防災会議幹事会を経て二月一日の県防災会議に至っています。この間、修正案についてパブリックコメント等県民からの意見を求める機会は作られていません。原子力災害対策編は法令上の修正期限が三月十八日であることから、意見を求める時間はあったと思うのですがいかがでしょうか。また、県民の防災意識を啓発する意味でも実施すべきであったと思いますが合わせてお答えください。

□避難計画について

 原子力災害対策編第一章総則第五節「原子力災害対策を重点的に実施すべき区域を含む地域の範囲」で、重大事故が予測される場合に即時避難が必要となる「予防的な防護措置を準備する区域」(PAZ)を五キロ圏に、原発からおおむね三十キロ圏は安定ヨウ素剤の服用や屋内退避、避難の準備を行う「緊急時の防護措置を準備する区域」(UPZ)に設定しました。PAZ内の人口は約二千人、UPZ内は約二十万人とされています。一方、女川原発で福島第一原発事故に匹敵する緊急事態が発生した場合の放射能拡散シミュレーションでは七日間の積算が百ミリシーベルトに達する地域は石巻市内で十五キロに及びます。原子力規制委員会で検討されている避難基準が七日間で五十ミリシーベルトですから地域はさらに拡大するものと考えられます。このことを考えれば、過酷事故を想定した場合にはPAZ圏のみならずUPZ圏からも避難が想定され、当該市町の範囲を越えることは確実と思われますがいかがでしょうか。UPZ圏の自治体からは避難先として隣接市町ではなく、仙台または県外を想定すべきとの意見が出されていると聞きますが、そのような意見の有無について伺います。

福島第一原発事故の現状を見るとき、その影響は広範囲におよび、避難は広域に及ぶと想定されます。帰還困難区域が設定されている福島県飯館村は福島第一原発から五十キロの距離にありますが、女川原発に置き換えれば五十キロは仙台市宮城野区、若林区に達します。そのような場合には県外避難も視野に入れなければなりません。防災は考えうる最大値を想定して立てるべきだとの教訓は東日本大震災および福島第一原発事故から得たものです。しかも実際の原発事故でそのような影響を受けている事実があるわけですからそれを想定すべきだと思いますがいかがでしょうか。

当該市町の範囲を越える避難や県外避難については修正された原子力災害対策編で「個別の県及び市町村の境界を越えた広域の避難計画の策定が必要な場合においては、国及び県が中心となって都道府県との調整や市町村との間の調整を図るものとする」と記述されています。県及び市町の境界を越える広域避難計画策定に当たって県はその中心的役割を果たすと考えてよろしいでしょうか。

島根原発を抱える島根県は福島第一原発事故から七ヶ月後の二〇一一年十月二十六日に行われた中国地方知事会議で県域を越えた避難計画策定への協力を各県に依頼し、十一月には広島県、岡山県、山口県でそれぞれ全市町村を対象とした説明会を開催しました。翌年二月には島根原発から三十キロ圏内の自治体に県内外の避難先の割り当て案を県から示し、各自治体で避難先との協議調整を行うという手順を踏んでいます。国からの防災指針や作成マニュアルが出る以前の動きであり、島根県原子力安全対策課は「できるところからやっていこうということで始まった」と述べています。広域避難については個別市町が避難先を独自に選択するのは無理があり、県が率先してその役割を果たすべきと考えます。

□PAZとUPZの問題

第二章原子力災害事前対策第十三節「避難計画の作成」において、「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)の住民避難が先行して行われるため、その円滑な避難が実施できるよう配慮しながら、原子力災害対策指針に基づく広域避難計画を策定するものとする」と記述されています。UPZ圏内では、PAZ圏内の避難が済むまで屋内退避しながら待つわけです。昨年十二月十二日に原子力規制委員会が定めた「地域防災計画(原子力災害対策編)作成等にあたって考慮すべき事項」では「PAZ 圏内に避難指示が出された際には、UPZ 圏を含む市町村は、同時期に避難を開始して避難経路の交通渋滞を招くことを避けるなど、PAZ 圏内の住民等が円滑に避難できるよう配慮すべきことについて、UPZ圏内の住民等に対し、あらかじめ理解を求める」と記述されています。「UPZ圏内の住民等」に、このようなことが理解されるとは到底思えませんし、このような言わば段階的避難計画が奏功するか否かを含め、十分なシミュレーションを行うと同時に、慎重に検討すべき課題と考えますがいかがでしょうか。

□モニタリングポスト

第二章第七節緊急事態応急態勢の整備のなかでモニタリングポストその他の整備を掲げています。女川原発周辺のモニタリングポストは県及び東北電力の既設、新設あわせて三十九ヶ所になりますが、十キロから三十キロ圏には八ヶ所に過ぎません。測定しなければ詳細な実態がつかめないこと、三十キロ圏が「緊急時の防護措置を準備する区域」(UPZ)にしてされたことを考えれば、モニタリングポストの大幅な増設が必要と思いますが所見を伺います。

□複合災害

 第二章第十一節複合災害に備えた体制の整備で「県は国と連携し、複合災害(同時又は連続して2以上の災害が発生し、それらの影響が複合化することにより、被害が深刻化し、災害応急対応が困難になる事象)の発生可能性を認識し、防災計画を見直し、備えを充実するものとする」と記しています。しかしその具体的な内容については何ら取り上げられていません。新潟県ではこれまでの防災計画でも複合災害の項を設け、「自動観測局の被災」「道路の被災状況や要員の参集状況を勘案」「情報伝達手段の機能喪失」「避難所等の被災により広域避難」「バス等を保有する機関の被災」など具体的な項目を列挙しています。東日本大震災はまさにこのような複合災害として現われ、それを経験した宮城県はその対策を具体的に準備していくことが求められています。複合災害に関して早急に補強していくことが必要と思いますがいかがでしょうか。

□災害時要援護者等への配慮

第二章第十三節三「災害時要援護者等の避難誘導・移送体制等の整備」において、「病院等医療機関の管理者が、避難計画を作成するものとする」と定め、第三章緊急事態応急対策第七節「屋内退避、避難収容等の防護活動」のなかで災害時要援護者等への配慮を規定しています。「病院等医療機関は、原子力災害が発生し、避難の勧告・指示等があった場合は、あらかじめ機関ごとに定めた避難計画等に基づき、医師、看護士、職員の、指示・引率のもと、迅速かつ安全に、入院患者、外来患者、見舞客等を避難させた場合は、県に対し速やかにその旨連絡するものとする」としています。これは全ての責任が医療機関や社会福祉施設の「管理者」だとするかのような記述だと指摘せざるを得ません。福島第一原発事故の際に大熊町にあった双葉病院で三四〇人の入院患者の救出・搬送に五日間かかり、その間に十九人が無くなりました。政府の事故調査・検証委員会の最終報告によれば県や自衛隊、警察などの連携不足が原因と指摘されています。原子力災害の大混乱の中で、自力で入院患者を安全に避難させるのには限界があります。それは医療機関だけでなく、特別養護老人ホームなど社会福祉施設でも同様です。「災害弱者の避難方法」については災害対策に従事する主体全体の課題とし、県がその具体策を提示することが必要だと思いますがいかがでしょうか。

□緊急輸送活動の具体的解決策の提示

第二章第十五節「緊急輸送路の確保体制等の整備」において、「県は、多重化や代替性を考慮しつつ、災害発生時の緊急輸送活動のために確保すべき輸送施設(道路、港湾、漁港、飛行場等)及び輸送拠点(トラックターミナル、卸売市場等)・集積拠点について把握・点検するものとする」とありますが、「点検」にとどまらず、具体的課題解決策を示す必要があると思いますがいかがでしょうか。

□安定ヨウ素剤

 第三章緊急事態応急対策第十節緊急時医療活動の中で安定ヨウ素剤の服用が規程されていますが、内容は国または県の指示により服用というものです。

福島第一原発事故では大量の放射能の放出が発生しました。特に炉内の圧力が一時限界を超えるまで高まり、その後一気に圧力が下がるという二号基の異変が起こった三月十五日が最大の放射能放出となりました。その日、当初は北風であった風向きが午後には東風となり福島県内陸部に放射能の雲・プルームが飛来し、折からの雨や雪によって地上に落下しました。放射性ヨウ素による甲状腺がん防護のため安定ヨウ素剤を飲むことが求められる事態ですが、放射能拡散予測のために本来使用すべきSPEEDTを政府は活用せず、原子力安全委員会が政府の原子力災害対策本部に「毎分一万カウントを基準に除染と安定ヨウ素剤の服用を実施するよう指示せよ」と送ったファクスも途中で紛失するという失態を演じています。結果として福島県や市町村に何らの指示も出されず、住民は放射能の落ちる中を避難で迷走し、安定ヨウ素剤を服用することもできませんでした。そのような全体の状況の中で、唯一、三春町だけが対象となる町民ほぼ全員に安定ヨウ素剤を配布し、最も高い放射能が町に飛来する時間帯にぴたりと服用を指示したのです。原発立地自治体ではなく、原子力防災についてほぼ準備はゼロであった三春町が、原発災害情報に接してからわずか二日間で情報を集め、検討し、独自の判断を行ったのでした。宮城県の原子力災害対策編でも、国の作成マニュアルでも服用は「国が決定した方針に従い、又は県独自の判断により」服用を指示するとしています。三春町の例を振り返るならば、住民の健康を守るためには最も身近な行政である市町村がその判断をできる体制にすべきと思いますが知事の所見を伺います。

□被曝管理

第三章第十節緊急時医療活動の中に「緊急時の公衆の被ばく線量の実測」が盛り込まれています。国の作成マニュアルには無い内容で、努力を評価しますが、避難完了後に直ちに被曝量を測定し、推計するための方策を防災計画に盛り込んでおくべきです。すなわち甲状腺検査、尿検査やホールボディカウンターによる検査、行動記録の作成などです。この点についての所見を伺います。

□安全協定

 柏崎刈羽原発の立地する新潟県では、これまでの新潟県および柏崎市、刈羽村だけなく、新潟県内の残りの二十八市町村が一月九日、東京電力と安全協定を締結しました。原発災害が広域的に影響を与えることに鑑み、宮城県でも東北電力が全市町村と安全協定を結ぶよう働きかけるべきと思いますが所見を伺います。

 

■水産特区について

 昨年の九月議会で桃浦を対象にしたと執行部から事前には説明された補正予算五億五千万円が県議会に提案され、厳しい議論を経て「水産業の復興に関する予算の執行に伴う水産業復興特区の申請については、関係者との合意を得られるよう特段の配慮をされたい」との付帯意見を付けて可決しました。知事あるいは担当部局が関係者との懇談会や意見交換を行うとともに、漁場の利用状況について現地調査を行ったと聞いています。しかし、それでも関係者との合意を得るにはまだ程遠い現状にあると指摘せざるをえません。

 二月十九日、県漁協石巻支所は「水産特区の導入を絶対に行わない」ことを求める意見書を知事あてに提出しました。意見書には桃浦を含む八つの浜の漁業者百十一人の自筆での署名が添えられています。桃浦からも十六人が署名し、その中には合同会社に加わらずにカキの生産を続ける意思を示している漁業者も含まれており、特区申請が浜に分断を持ち込んでいることを如実に表していると思いますが所感をお示しください。

 意見書には七項目の水産特区に関わる問題点が列記されており、漁業者の率直な疑問です。それは

一、 生産性の高い漁場・低い漁場があるため桃浦のカキ生産者は毎年漁期前にクジで漁場を決め公平に使ってきたが、桃浦LLCの漁場を区割りすると他の桃浦カキ生産者の漁場が固定化されてしまい生産に影響が出る。
二、 組合管理の漁場であれば筏のはみ出しなど法的に問題なかったが、隣り合う桃浦LLCの漁場へのはみ出しは三年以下の懲役、二百万円以下の罰金と重い法律違反になるため、隣接する漁場は十分な養殖筏の展開が難しくなる。
三、   桃浦LLCに漁場を与えれば、将来自分で養殖を行いたいという桃浦の生産者が現れた場合、与える漁場が無くなる。
四、 九月の漁業権一斉更新に向けて漁場環境に配慮し、密殖防止を図り、高品質の養殖品を生産していくため、広間隔で筏を展開できるよう、現行漁場を統合し大区画漁場として新たに申請する計画であるが、この計画の実現が難しくなる。
五、 組合が窓口になり、関係浜が共同で行う筏数制限や展開の方法などを取り決める機能が無くなり、漁場の秩序維持が難しくなるなど浜に問題を起こす。 
六、 過去に県の指導で沖の漁場は共有で申請し免許され、浜の話し合いで漁場を配分したものである。これを震災時の今あえて分断しようとする県のやり方に不信感を抱くようになっている。
七、 桃浦LLCは昨年よりカキ生産を行う計画だが、カキ生産も終盤を迎えようとする今に至っても全く生産が始まっていない状況にある。安定した経営がなされ、地元の復興に役立っていけるのか、将来逆に混乱をもたらさないか大変不安である。

これら七点の意見、指摘に対する知事の所見を求めます。

 総合特区法は十四条四項で「当該免許に関わる地元地区内に住所を有する漁民の生業の維持」を要件の中に含めています。桃浦では桃浦LLCに加わらずにカキ生産の継続を意思表示している漁民がいるとともに、体調回復とともにカキ生産への復帰を目指している漁業者もいます。これらの漁業者のカキ生産が保障されること、利用漁場についてこれらの関係者と桃浦LLCとの合意が特区申請の前提だと思いますが所見を伺います。

 昨年十月三十一日から十一月三日まで水産庁による現地調査が行われました。県漁協と関係の浜、桃浦LLC、海区漁業調整委員会、県をそれぞれ訪れました。その際にも水産庁からは、漁業権免許の交付、漁場計画の作成の際には海区漁業調整委員会の答申が必要であることから、特区申請にあたっては海区漁業調整委員会との事前の協議を十分行うようアドバイスがあったと聞いています。最終的には漁業権の一斉更新時に具体的な漁場区割りが行われるわけで、特区申請にあたっては事前の海区漁業調整委員会との合意があるべきだと考えますがいかがでしょうか。

 二月十八日の知事記者会見では「当初よりも相当程度理解は深まっている」と述べています。一方で二月十九日に県漁協石巻支所は自筆で署名を添えて反対の意見書を提出しました。知事は何を持って理解が深まっていると判断したのか根拠をお示しください。

知事の一月二十一日の記者会見を受けて新聞は「二月に特区申請」と報道し、二月十八日の記者会見を受けて「申請、三月に」と報道されました。問題はどのようになった時に申請の環境が整ったと判断するかです。その基準をお示しください。